肝臓病の食事療法
自覚症状がなくても、異常があれば直ちに治療を!
  • 肝臓病の多くは、自覚症状がありません。
    肝臓は予備能力が大きく、かなり病気が進行しないと症状が出ないのです。
    肝臓が“沈黙の臓器”と呼ばれるのはこのため。
    たとえ肝臓が沈黙していても、検査で異常があれば、直ちに治療を始めることが必要です。
    一口に肝臓病といっても、急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変・脂肪肝などさまざま。
    原因や治療法も病態によって異なります。
沈黙の臓器からのメッセージ
    1. 肝臓病にもっと関心を
      自覚症状の少ない肝臓病ですが、わが国では70万人が急性肝炎、130万人が慢性肝炎、30万人が肝硬変、2万人が肝細胞癌にかかっているといわれます。
      慢性肝炎の大部分は、B型・C型ウイルスが原因。そのほか、アルコール性肝障害や肥満による脂肪肝、薬剤性肝炎などがみられます。ウイルスが原因の肝炎には、抗ウイルス治療(インターフェロンなど)が行われます。アルコール性肝障害では禁酒が、脂肪肝ではアルコールや菓子類の制限、肥満の解消が治療につながります。
    2. 肝臓は無口な働き者
      肝臓は、日々黙々と、多くの重要な働きをこなしています。肝臓病が進むと、このような働きが円滑に行われなくなります。
      1. 糖質とエネルギー代謝
        食事から取り込んだ糖質をグリコーゲンとして貯蔵。必要に応じてこれをグルコースに変えて血液中へ放出し、各組織でのエネルギー源となります。
      2. タンパク質と脂質の代謝
        血液中のタンパク質や、いろいろな酵素を作ります。
        タンパク質を分解した時にできる有毒なアンモニウムも解毒。脂肪酸から中性脂肪を作り、組織にエネルギーを供給したり、コレステロールの合成や代謝も行います。
      3. ビリルビンの代謝
        古くなった赤血球からできるビリルビンを水に溶けやすい形にして胆汁に排泄します。
      4. 胆汁の生成と分泌
        コレステロールから、胆汁の主成分である胆汁酸を作ります。胆汁は脂肪の分解を行います。
      5. 解毒作用
        体内に生じた毒性物質、外から取り込まれた薬物や有害物質を解毒します。
食事療法の基本は、適量のエネルギーと栄養のバランス
  • 肝臓病の食事療法といえば、以前は「十分なエネルギーやタンパク質をとり、脂肪を控える」ことが大原則でした。ところが、現在では、病んでいる肝臓に多くの栄養を与えても、かえって肝臓の負担を増してしまうことががわかっています。
    肝臓病の食事療法の基本は、「エネルギーが適正で、栄養バランスのとれた食事」をとることです。
    ただ、肝臓病にはさまざまな病態があり、食事のとり方も異なるのでご注意ください。
@慢性肝炎
  • 普通食を基本にした、バランスのとれた食事をとります。
    特別な脂肪制限は必要ありませんが、禁酒を実行してください。
    • 朝・昼・タの3食を規則正しく!
    • 毎食、主食(こ飯やパン)・主菜(魚・肉・卵・大豆製品)1品・副菜(野菜)2品をとります。
    • 1日に果物1個、牛乳コップ1杯、油を使った料理2品程度をとります。
    • 多種類の食品をとるようにします。
    • アルコール以外の嗜好品も、とりすぎないようにします。
A脂肪肝
  • 肥満が解消できる食事をとります。
    • 食事量を標準体重に見合ったものに、見直します。
    • 食べ方の見直しを行います。食事時間が不規則だったり、早食い・まとめ食いはありませんか?
    • 嗜好品をとりすぎないようにします。アルコール・菓子類・ジュース・果物などの食べすぎが、肥満につながっていませんか?
Bアルコール性肝障害
  • まず、禁酒を行い、バランスのとれた食事を心がけます。
    • とにかく禁酒することが大切。飲酒を続けると、肝癌になりやすいことがわかっています。
    • 栄養状態がよくない場合が多いもの。慢性肝炎に準じた栄養バランスのよい食事をとります。
C肝硬変
  • 肝硬変の病態によって、食事療法も異なります。
  • 【代償期】・・・重篤な症状がない状態
    • 慢性肝炎に準じた食事療法を行います。アミノ酸製剤★1を補給する場合が多くあります。
    • 便秘しないよう野菜・海藻・果物をとり、食物繊維の多い食事を心がけます。
    • 重症になると味覚が鈍化するため、塩分やエネルギーのとりすぎに注意します。
    • 肥満気味であったり、糖尿病がある時も、エネルギーのとりすぎに注意します。


    【非代償期】・・・以下のような症状がある状態
    A..腹水がある場合
    • 塩分制限(1日3〜7g)を行います。塩分量は腹水の程度に応じて決められます。
    B.肝性脳症の場合
    • 血液中のアンモニアが多くなると、意識障害が起こります。これを防ぐため、アンモニアのもとになるタンパク質を制限します。
    • 不足するタンパク質は、アミノ酸製剤★1で補います。
    • タンパク質制限を上手に行うため、特殊食品★2の利用が勧められます。
    • 便秘は肝性脳症を起こしやすくするため、食物繊維をとるよう心がけます。

    C.食道静脈瘤
    • 食べすぎて、食道を刺激しないようにします。
    • 食道の炎症を悪化させる香辛料などの刺激物、固いもの、コーヒーなどを避けます。

    D.その他
    • 就寝前に、軽食をとります。★3
★1 アミノ酸製剤とは?
  • 肝臓病で不足するアミノ酸を補う目的で、アミノ酸製剤(肝疾患用経口栄養剤)が
    使われます。これを使うと、アンモニアを上昇させることなく、安全に必要なタンパク質(アミノ酸)をとることができます。
★2 タンパク質制限のめの特殊食品
  • タンバク質を減らしたご飯や小麦粉、めん類などが販売されています。通常、市販されていないので、入手方法や使い方は栄養士にご相談ください。
★3 寝る前に軽食が必要なわけ
  • 非代償期の肝硬変では、肝臓のグリコーゲン貯蔵量が減少するため、食後10時間近くたつ早朝起床時に糖が不足状態になります。これを防ぐため、就寝前に軽食をとることが勧められています。200kcal程度のおにぎりやパン、または肝疾患用の栄養剤をとりますが、軽食が必要かどうかは医師や栄養士に相談してくださしい。

肝臓病の食事Q&A
 ●油をとっていいと聞きましたが、本当でしょうか?
  • 以前、わが国に多かった肝臓病は、黄疸を伴うものが多く、脂肪制限が必須とさ
    れていました。近年、黄疸の強い時期を除いて、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・
    K)や艮質のタンパク質をとるためにも、適量の油を積極的にとることが勧められています。
    油の種類としては、植物性脂質と魚介類の脂質が望ましいとされています。
    調理にはサラダ油やオリーブ油を使い、肉より魚をとってください。
 ●食後にしばらく横になるように言われましたが、どうしてですか?
  • 肝臓に栄養をたくさん含んだ血液がよく行き渡るようにするためです。
    障害のある肝臓は、栄養を吸収する能力も落ちています。血液が多く、肝臓をゆっくり通るようにしてやると、栄養を利用しやすくなります。
    同じような意味で、1日の食事の回数を増やしたり(3食の間に軽食をとる)、食物繊維を含む食品を食べて、栄養がゆっくり吸収されるようにすることも必要です。
 ●加工食品は、控えたほうがいいのですか?
  • 加工食品に含まれる食品添加物は、体にとっては毒物。肝臓で解毒されます。弱っている肝臓の負担を減らすために、控えたほうがよいでしょう。
    また、加工食品は意外と塩分が多いため、塩分のとりすぎも防げます。
 ●GOT、GPTとは、いったい何ですか?
  • 検査結果に一喜一憂してしまう、おなじみのGOTとGPT。
    ところで、これはいったい何を意味するのかご存じですか?
    肝臓の細胞がたくさん壊れると、そこに含まれる酵素であるるGOT・GPTもたくさん血液中に流れ出し、数値が高くなります。
    しかし、肝臓の状態の総合評価は、そのほかの所見や肝機能検査の成績も加えて判断されます。不安や心配がある時は、主治医に相談してください。
    (※GOTをAST、GPTをALTと呼ぶ場合もあります)