腎臓病の食事療法
機能が低下した腎臓にいたわりを!
 腎臓は老廃物を排出し、必要な物質を再吸収するなど、体をいつもよい状態に保つ働きをしています。
こんな大切な働きをする腎臓ですが、腎臓病には目立った症状がありません。
体がだるい、疲れやすい、頭痛、動悸、ちょっとしたむくみといった何気ない症状が、腎機能低下のシグナル…。
症状がなくても、いったん弱った腎臓を放っておくと、さらに機能が低下するので、
きちんとした治療が必要です。
腎臓の働きは?
  • 腎臓の働きは?
    腎臓は、背中側の腰のあたりにある、左右一対の空豆形の臓器。体の老廃物を排出したり、必要な物質を再吸収して、体をし、つもよい状態に保つ働きをしています。血圧を調整したり、血液を作るのに必要な物質を分泌するのも腎臓の役目。腎機能は下のように分類され、食事のとり方や生活の仕方が決められます。
  • @ほぼ正常   Ccr91以上
    A軽度低下   Ccr90〜61
    B中等度低下 Ccr60〜31
    C腎不全     Ccr30〜11
    D末期腎不全 Ccr10以下
    Ccrクレアチニンクリアランス=腎機能を表す指標のひとつ

弱っている腎臓を保護
    • 腎臓病には多くの種類がありますが、大きく分けると次のようになります。
    • @腎炎(糸球体腎炎・lgA腎症・膜性腎炎など)
    • Aネフローゼ症候群
    • B腎不全
    • この中で、もっとも多しいのが糸球体腎炎。また、最近では、糖尿病から腎不全になる人が増えています。
    • 治療は腎臓病の状態や時期によって多少異なりますが、共通しているのは弱っている腎臓を保護すること。
    • 腎機能がさらに悪くならないよう、休ませます。
    • それには、下記のポイントが大切です。
      1. 安静・保温・適度な運動と休養
        保温特に腰回りを冷やさないよう注意!
        夏の冷房や海水浴にも気をつけて
      2. 食事療法
      3. 薬物療法


タンパク質・塩分を控え、エネルギーを十分に
  • 腎臓病の食事療法は症状によって違いますが、一般にタンパク質や塩分を控え、エネルギーを十分にとります。場合によっては、リンやカリウムの制限、水分の制限を行う場合もあります。
@タンパク質制限を守るには
  • タンパク質をとると老廃物が出るため、これを排泄する腎臓に負担がかかります。
    腎臓の負担を最小限に抑えるには、良質なタンパク質を適量とることが大切です。
 ●加工食品は避けます
  • 体にとって良質なタンパク質食品とは、魚・肉・卵・大豆製品・乳製品など。これらの加工食品である練り製品・八ム・べ一コンや市販の調理済み食晶、冷凍食品などは、塩分が多く好ましくありません。

 ●穀類のタンパク質に注意
  • ご飯やめん類にものタンパク質が含まれているのをこ存じですか?そのため、タンパク質を減らす加工をしたご飯やめん類も市販されています。
    こうした治療用特殊食品を利用すると、主食(ご飯・めん類)のタンパク質を減らした分、タンパク質の多い魚や肉をより多くとれます。
 ●肉や魚は、見た目でボリュームアップ
  • 肉は野菜をしんにして巻いたり、衣をつけて揚げると、少ない量でも見た目が多くなり、満足感が増します。えびや貝は、殻こと料理するのが量を多く見せるコツ。肉・魚を野菜といっしょに串に刺すのもおすすめです。
    • 肉はチャーハンなど、主食といっしょに料理
    • 千切り野菜を肉で巻いて、焼く
    • えびや貝は殻ごと料理。尾頭付きのえびなら2尾でも豪華
    • 肉・魚は野菜といっしょに串に刺す

A上手にエネルギーアップ
  • エネルギーが不足すると、摂取したタンパク質を有効に利用することができません。
    腎臓病の人は、指示されたエネルギー量を上手にとりたいもの。ただ、肥満している場合は、エネルギー(カロリー)を減らすこともあります。

 ●甘いものにはタンパク質が・・・
  • エネルギーをとろうとして食べると、思わぬ落とし穴に…。たとえば、大福ひとつには卵半分と同程度のタンパク質が含まれます。アイスクーム・ショートケーキもタンパク質が多い食品。
    市販の菓子でタンパク質が少ないのは、あめ・炭酸飲料・シャーベット・アップルパイ・甘いスナック菓子など。砂糖を紅茶・コーヒー、薬を飲む水などに入れても、カロリーがとれます。
 ●頼みの綱は、油類
  • 油は少量でも高カロリー。天ぷらやフライなど、毎日1回揚げ物をすると、楽にエネルギーがとれます。サラダならマヨネーズ(タンパク質がほとんどなし。塩分も少ない)を。パンにはマーガリンやバターをたっぷりと。コーヒーには、生クリーム(タンパク質はほとんどなし)がおすすめです。チャー八ンやかた焼きそばなど、主食に油を使うのも効果的。
    油の種類は好みですが、MCTオイルは消化がよく、血中脂質を増やしにくい性質があります。
    この油を使った低タンパク質の菓子類も発売されています。
 ●はるさめは使いよう
  • スパゲッティやマカ□二にはタンパク質がありますが、はるさめはでんぷん食品。タンパク質はありません。サラダに、揚げて付け合わせにと、上手に利用したい食品です。
Bカリウム制限について
  • カリウムは腎臓から排出されるため、症状によっては制限される場合があります。
 ●カリウムは野菜と果物にだけ?
  • カリウムは生物にとって重要な電解質。よく制限される野菜・果物のほかに、肉・魚・卵・大豆製品にも含まれます。タンパク質制限のため、これらの食品を制限すれば、それだけでカリウムの摂取も少なくなります。
 ●ゆでこぼす以外の方法は?
  • カリウムは水に溶ける性質があるため、野菜類をゆでこぼす方法が勧められます。実際には、キャベツの干切りを流水にさらしたり、大根おろしの汁を切るだけで、カリウムは減少。皮をむいたり、種をとったりするのもよい方法です。
 ●カリウムの多い野菜と果物は?
  • かぼちゃ・トマトはカリウムが多いので注意!特に、トマトジュースは控えます。
    バナナ・キウイフルーツ・メ□ンなども、カリウムが多く、反対にパイナップル・みかん・りんごなどは少なめ。果物も、缶詰ならカリウムが少なめなので安心です。芋類はカリウムが多いため、ゆでこぼして使います。

 ●海草類も少しは食べられます
  • 海藻はカリウムが多いとされていますが、通常食べる量なら、それほど気にする必要はありません。焼きのりや酢の物のわかめ程度なら、普通に食べられます。
C塩分を控えて、おいしく!
  • 塩分は腎臓から排泄されるため、取りすぎは腎臓に負担をかけます。
    塩分を控えても、工夫しだいでおいしい食事が楽しめます。
 ●香辛料・香味野菜を上手に利用
  • 香辛料(洋辛子・唐辛子・こしょう・ローリエ・わ
    さび・山槻)や香味野菜(しょうが・にんにく・ねぎ・丈根おろし・しその葉・木の芽・パセリなど)を科理に上手に利用すると、薄味でもおいしく食べられます。
 ●焦げ目や温度は?
  • 幸げ目をつけた焼き魚を、焼きたてのアツアツで食べると・・・、塩味はいらないおいしさ!
    幸げ目や温度も、料理をおいしくしてくれます。

 ●新鮮な材料をおいしいだしで
  • 料理には新鮮な材料を使うのが、塩分控えめのコツ。加工食品や干物には、塩分が多く含まれています。
    また、だしのうま味をきかせて料理すると、薄味でもおいし<食べられます。
疾患別の食事療法
  • 腎臓病には多くの種類があり、病態ごとに食事療法のポイントが少しずつ異なります。
 腎炎
病態
タンパク尿・尿潜血(尿にごくわずかの血液が混じる)・高血圧・むくみ
@塩分の過剰摂取を避けます。
塩分は、通常1日7g以下に制限されます。
高血圧とむくみは、塩分摂取量と密接な関係があります。
Aタンパク質の過剰摂取を避けます。
タンパク質は、1日60〜70g(子供では、成長を考慮して増加)、または標準体重1kg当たり0.8〜1.0g。高タンパク食は、腎臓病の悪化を加速します。
Bエネルギーを十分にとります。
通常は、1日1800〜2000kcalをとります。または、標準体重1kg当たり30〜35kcal。エネルギーが不足すると、タンパク質を十分に利用できません。
肥満の場合はエネルギーを減らす場合もあります。
例 標準体重60kgの人
 60×30=1800kcal(1日のエネルギー)
 ネフローゼ
病態
高度の持続性タンパク尿・低タノパク血症(栄養状態が悪いこと)・むくみ・高血圧
@タンパク質を制限します
通常は標準体重1kg当たり0.8gに、制限されます。以前は、高タンパク食が勧められましたが、現在では否定され、腎臓に負担をかけることがわかっています。
また、薬物療法がよく効くタイプのネフローゼでは、タンパク質制限を行わない場合もあります。
例 標準体重60kgの人
 60×0.8=48g(1日のタンパク質50g)

Aエネルギーを十分にとります。
腎炎の場合と同様に行います。
例 標準体重60kgの人
 60×30=1800kcal(1日のエネルギー)
B塩分を制限します。
通常は1日5g程度に制限します。
C場合によってカリウムを制限します。
血液中のカリウムが多い場合は、制限します。
D水分制限は行いません。
 腎不全
病態
体液異常(尿素窒素・カリウム・リンが異常に増加)・全身浮腫・高度の低タンパク血症・高血圧
@エネルギーを十分にとります。
腎炎と同様に行います。
例 標準体重60kgの人
 60×35=2100kcal(1日のエネルギー2100kcal)
Aタンパク質を制限します。
通常は、標準体重1kg当たり0.6〜0.7g未満に制限されます。
例 標準体重60kgの人
 60×0.6=36g(1日のタンパク質40g)
B塩分を制限します。
通常は、1日7g以下に制限します。

C場合によってリン・カリウムを制限します。
血液中にリン・カリウムが増えた場合は、制限します。タンパク質制限を行うだけで、すでにかなり制限していることになります。
D水分を制限します。
浮腫の程度により、水分を制限します。
【参考文献】
 腎疾患患者の生活指導・食事療法に関するガイドライン,日本腎臓病学会,1997